この国のこれからのカタチ

gris-bijoux2006-01-14

広告のお仕事でよく、そのブランドが顧客に対して何を約束するのか、「ブランド・プロミス」というものを考えたりすることがあります。


で、そんなことを日々やっている人たち(正確にいうと、広告だけでなく、小説家や写真家や広くクリエイター)に、「この国のプロミス」=憲法前文について考えてもらおう、という趣旨の企画が、今回の広告批評


いや、結局この前の広告サミットがどんなだったのかな、という好奇心(後悔)でそのレポートを立ち読みしていたら、本来の特集が意外とおもしろかったのでつい購入してしまいました。



現行憲法自民党の「新憲法草案」の両方を比較した上で、どういうスタンスでも構わないので、エッセイでも詩でも自由なスタイルで、この国の望ましいカタチをあれこれ考えよう(総勢65人・1人1ページ)、というもの。


「こういうカタチの国になってほしいという積極的な思いはない。ただ、こういうカタチの国にはなってほしくないという思いは明確にある。いま、なってほしくない方向に国は向かい始めていると思う。自民党憲法草案にもその匂いは現れている。「愛情」「責任感」「気概」などの言葉選び、最終行のかけがえのない地球環境うんぬんのくだりにも、この国が向かいつつある空疎と嘘くささがのぞいている。」


川崎徹氏の意見。


私も含めて、一般大衆的にはこんなかんじの感想が正直、大半かと思っていたけど、でも改憲派って過半数ぐらい今いるんだよね。どうなんでしょうか。あんまりこんな話周りの人としないものだしね。
表現のプロたちの、「こんなセンスも美しさも魅力もない文章をうちの国の前文になんかしていいの?(いや、ありえない!)」という単純に表現としてのダメ出しとかもおもしろいし、その他にも、草案を読んだ後の「・・・うーん?」という違和感を的確に突いてくる人が多くて、常に時代の空気を敏感に感じて表現してきた人たち65人たちの意見、批評、思い、というか65人の“平和を求める祈り”だね、をまとめて読むと、やっぱり新聞の社説とか報道番組のコメンテーターなんかよりずっと考えさせられるし、グッとくるんですよ。思いの伝え方がうまいんだね、やっぱり。



それとね。


65人のうち、1人だけ「テーマが重すぎて、考えられません。」というクリエイターがいました。


今、日本で間違いなく最も脚光を浴びているクリエイターの一人です。


今年日本のいろいろなところで問題にされるであろうテーマについて考えられない人に、今の「時代」や「デザイン」が語れるってことがあるのかな、と好きなだけにちょっとがっかりな気分になってみました。



「大衆を悪い方向へ向わせるのは容易だが、大衆を美しい方へ向わせるのは無理だと言った人がいます。私たちは、偉そうに大衆の心を動かして来たと言ってきました。しかし、結局、コピーの面でも小泉さんに負けているような気がします。私たち、広告制作者に出来ることは、まだまだあると思います。」


上の小田桐さんのような志のある、表現の可能性を信じているクリエイターの方がかっこいいでしょ。
大切なことを気づかせる、訴えかけるプロとしてのせっかくの能力と技術は、どこかの企業のお金儲けのためだけではなくてもっと大切なところで使われてもよいのにな、と思います。・・・と、思えるいい企画でした。今回の広告批評