千年、働いてきました
世界最古の会社は日本にある。
「金剛組」
宮大工の総本山(?)で、聖徳太子だっていたのかどうかわからないその頃から、確実にこの会社は存在していた。
創業百年以上の老舗が日本には十万以上あって、これはアジアの国々の中ではダントツで、ヨーロッパですら、最古の企業がフィレンツェの金細工メーカーらしいのだが、日本にはこれより古い店や会社が百社近くあるのだそうだ。
なぜ日本ではこれほど老舗が生き続けるのか―?
「お店を始めるのは簡単だけど、続けるのは大変だよ。」と私も何度と言われてきた言葉ですが、老舗企業を取材したこの本、超おもしろい。
例えば、ケータイの折り曲げ部分には、京都の創業三百年の、もともとは金箔屋さんの技術が活かされ、ケータイのバイブレーション機能になくてはならないブラシを作っているのは、百数十年前に日本橋の両替商をしていた会社。液晶の画面には、明治時代にランプや鏡台を製造販売していた会社の鏡が使われ、世界中の携帯の発振機には神奈川の老舗企業の特許技術が使われ・・・と、実は創業百年以上の老舗の製品は知らないところで、しかも時代の最先端で大活躍しているわけです。
時間がどれだけ流れても、自分たちの創業以来のコアからは決して逸脱せず、しかし時代に合わせて柔軟に対応し、他者も許容しながら、「分」をわきまえ、職人あるいは商売人としての「町人の正義」を貫く― ということを、時代が変わってもずっとやってきた謙虚というか真摯な姿勢に、日本人ってやっぱ、なんかいいな、という気分にさせられる本です。
「愛国心」という言葉はあんまり好きじゃないし、「国家の品格」とかも流行ったけど、「日本という国は・・・!」とか別にそういうことを謳うわけでもなく、ただ読んだ後に、ふっと、あぁ、日本っていいな、と愛情がわくかんじ?
鴻上尚史が「今の若者が右傾化しているというが、それはむしろ“保守化”であり、“変わらない自分への肯定”だ。」と言っていたけど、この本はむしろ老舗という保守の権化のよう思えるものが、もちろん守るものはありながらも、実は時代とともに必死で変化・対応していきサバイバルしていくその革新性というか柔軟性に感動します。
あとね、京都の老舗に共通する特徴のひとつに、「身の程を知って分相応に暮らすこと」というのがあるそうですが、その他、各老舗の家訓がいいんだ、これがまた。つつましやかで、義を重んじる、というか。そういう誠実さが何よりも商売を続けていけることなんですね、やっぱり。
金剛組経営難という報道があったときに、
なにーー!!金剛組を潰したら、大阪の恥や!!!
ということで、全然付き合いも無いのに、大阪人の心意気のみですごい勢いで高松建設の会長が再建に乗り出す件(くだり)もいいです。
「これほどの老舗だから、お客様も、金融機関も、高松建設も、みんなが助けてくれました。そこがやっぱり日本人のすばらしさです。」
と、もちろん老舗だけの努力もさることながら、日本人の、職人や老舗を愛する愛情が支えている部分もあるんだよ、と締めているところも◎。
写真は、Kira Bellaのペリドットのネックレス。¥18900(→完売御礼)