猿楽珈琲

gris-bijoux2007-03-26

先日お昼を食べ損ね、さすがに夕方ぐらいに血糖値が下がってきたため、猿楽珈琲で生クリームのせトーストでも食べようと思い、ちょっと外出。



猿楽珈琲。



ご存知でしょうか。


代官山郵便局の隣の階段を下がったところにあるんだけど、わかんないけど、必ずぴったりの時間とかに開いているわけじゃなく、閉まるときも「だいたい」夜11時ぐらいみたいなかんじの店です。入り口も薄暗く、オレンジのライトがポッとついていて、中に入ると、男性一人で全てを切り盛りしていて、レコードが流れ、時計の音がするような静かな、雰囲気のあるお店です。「お子様はお断り」「ゆっくり珈琲を入れるので、お急ぎの方お断り」等々、お店のルールがあって若干緊張を強いられるものの、でも、その代わりルールを守ればいつまでそこにいていいようなお店です。



一人で財布と鍵だけの手ぶらでいっちゃったので、珈琲が出てくるまでの間、ただただボーッとしていたんだけど、あまりにヒマそうに見えたのか、レコードをひっくり返しに近くにきたオーナーが話しかけてきてくれました。


ちなみにオーナー、スキンヘッドの、いかにもこだわりの男なので、つい反射的に「あっ。やばい。私この店のルールに反したか(香水がくさいとか)」と思って、身構えつつ応対。



「この辺で働いているの?」


「あー、そうです。この裏です。昔、2年前ぐらいにお花屋さんのあったところでアクセサリー屋やってるんですけど。」


「へへ。2、3年前なんて昔って言わないんだよ。でも、なんとなくわかるかな、場所。」


「オーナーはどれぐらいやってるんですか?」


「26年。前、同じあたりに17年ぐらいアクセサリー売ってる女の子がいたんだけどねぇ、結婚しちゃったのか、気づいたら無くなってたねぇ・・・。フフ。でも、商売って楽しいでしょ?」


「うん。そうですね。」




たいてい「店やってる」と言うと、その会話の続きは「たいへんでしょ?」なんです。特に同業者は。



しかも、このオーナーは同潤会アパートがあった頃からずっと代官山を知っていて、アドレスが出来たり大手のお店がたくさん出来たり、代官山がどんどん変わっていく中、お店を始めては消えていく私のような若い子たちを多く見ているはずで、それでも「たいへんでしょ?」ではなく「楽しいでしょ?」と言ってくれたのが、なんだかあったかいなぁ、と思ったのです。



お仕事はなんでもたいへんで、それでもやっぱりお店をやるのは楽しい、と思う。
たとえ閉めることになっても、その間はお店ならではの楽しいことがきっとみんなたくさんあったはずだ。



今○○があるあそこは昔は八百屋でね・・・とか、代官山の歴史を珈琲とトーストを食べながら、ずっとうかがっていたのだけど、それぞれの店にいろんなドラマがあって、でもそれはほんとに街の中の点でしかなくて、うまく書けないけど、自分もまた、大きい流れの中の小さいドラマの一つの中で右往左往してるだけであって、俯瞰でそれを見ると、たいへんなこともなんだかそれはたいしたことではないというか、それは“たいへんでしょ?”というおおげさなものより“楽しいでしょ?”っていう括りでいい気がしたなぁ。よく伝えられないけど。


代官山の主が、今日も変わらず、地下でポコポコ、コーヒーを一人入れている、と思うと、いろんなことをまぁ、ゆったり受け入れようかな、と思う。


写真は、abbieのリング。¥6510(→完売御礼).