先達のプレゼント
例えば、莫大な広告予算があるとか、流通を押さえている、とか大企業ならではの力技とも言えるダイナミックな手法で展開ができない場合、誰も知らないブランドを広げていくためには、非常に地道な工程が必要となります。
実際、FRANZは今その途中の段階にあってまだまだこれからなわけですが、それでも少しずつですが今では様々な全国の百貨店さんに興味を持っていただけるようになりました。
改めて振り返ると、そこには私が生きてきたこの30数年の中のたくさんの方たちとの偶然のような出会いが複雑で不思議な作用をし、事態が展開していくことが多く、それはもう計算ができないもので、もし私ではない誰かがFRANZを扱っていたならば、またその人の持つ縁で今とは違った育ち方をFRANZは日本でしたように思います。それがFRANZにとって良かったんだか悪かったんだかわからないけれど。
FRANZの日本での最初の突破口は、「家庭画報」でした。
目次を開いた次のページをすべて使用しFRANZをご紹介いただき、それはそれは美しく商品写真を撮影していただきました。
その価値というのはなかなかわからないと思うのですが、広告会社で雑誌の料金表が頭に入っている人間なんかは「これ、広告換算したら、○百万円だよ!しかもブルガリの対抗面じゃん!」と一番ヴィヴィッドに反応してくれます(笑)。金額的な問題を別にしても、あれから何年経ってもたくさんのお客様から「家庭画報にこれ載ってたわよね」とお声掛けいただけるほどで、百貨店のバイヤーさんを説得する場面において、「あの家庭画報さんが大きく取り上げているものであれば」ということで、ブランドの信用を担保するものとしてこれ以上のものはありませんでした。逆に言うと、バイヤーさんたちもあの1ページがなければ、誰も知らないブランドを扱う決断をしにくかったように思います。
それは、ある一人の編集者の方が取り上げてくださったことがきっかけでした。
こちらからご紹介したものの、それでもおそらく候補になるものはたくさんあったはずで、しかもあのように大きく誌面を割いていただけるとは思いも寄らず、あのページがなければ、FRANZは今百貨店に取り扱ってもらえていないようにも思います。
あれから数年経ち、その編集者の方から先日メールをいただきました。
「久しぶりにHPを拝見したら、同じ大学の後輩なんですね。嬉しくなってメールをしました。がんばってくださいね。」
という旨で、
これはおそらく何千人と毎年卒業生を輩出する大学の方にはわからない感慨だと思うのですが、うちの大学の場合、一学年を全部足し合わせても500人いるかいないかのような大学なので、就職活動したってOG訪問しようにもほとんどOGいないし、世の中に出てもめったに出会うことがないわけで、
それでもやっぱり、見えないところで縁のある人(先輩)が気付かずチャンスを与え、助けてくれていて、道を拓いてくれたんだなぁ、と思うとなんだか不思議な気持ちになりました。ありがたいです。
ちょうどその編集の方が気に入ってくださって大きく写真を撮ってくださったのが、ちょうどこの銀座三越のDMの金魚でした。私の中では記念シリーズです。