LAND OF PLENTY

land of plenty

昨日の休みは、銀座に用事があり、ずいぶん早く終わったので、フラリと映画を観に。


ヴィム・ヴェンダース監督/「LAND OF PLENTY」


ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」や「ベルリン・天使の詩」の監督の最新作で、9・11以後の“アメリカ人”を描いた映画。割と話題になっているはず。


亡くなった母親の手紙を伯父に届けるため、イスラエルで育った主人公が10年ぶりに故郷アメリカの地に着く。ベトナム戦争で心に傷を負い、そして現在は“アメリカ”を守るため、テロの妄想に取り付かれ、アラブ系の人々を追い掛け回す日々を過ごす伯父とともに、ある事件で殺されたアラブ系ホームレスの死体を運ぶ旅に出る ― というストーリー。


華氏911」のようなシニカルさは一切なく、穏やかな、暖かい視線で希望を持って描かれた、とてもストレートな映画だったと思う。


私の解釈。


アメリカの貧困や、後半のシーンで主人公に「報復(=力)では絶対に解決しない」と言わせるセリフや、いろいろメッセージはあるのだろうけど、ポイントはやっぱりラストのシーン。


妄想に取り付かれた狂信的タカ派な伯父が、旅の途中で「いったい俺は何をしてたんだ?」と疑問を持ち始め、そして、途中亡くなった妹の手紙を読みながらニューヨークへ旅を続け、最後グラウンドゼロを目の前に「あれ?思ってたほどほど胸を打たないな。」的な発言をするんだけど、ここが象徴的なセリフ。


要は、姪と旅を続けるうちに客観的かつ冷静な視線を取り戻していくわけです。
監督自身も「不正や欺瞞、人を迷わせる愛国主義、誤った情報の操作といったものを扱っている」と言っていて、タイトルにもなっている同名の音楽の中にある、


「この豊かな国の光がいつの日か 真実を照らし出しますように」


という、まさにその祈りが監督のメッセージなんだろうと思う。この監督、アメリカとアメリカ人が大好きなんだろうなぁ。わかんないけど。なんかやさしい。


先月だか今月の文芸春秋で「なぜ日本は敗れたのか」といった特集をしていたけど、日本人だって戦後何十年経ったってどうしてこんなことになっちゃったのか、って未だに検証しきれていない訳で(だからこその特集)。


人間個人単位でも、自分の過去を、正の部分も負の部分にも向き合って冷静に見つめて、そこから自分を立て直していくって、相当精神的に強くないとできないし、難しい作業だよねぇ・・・。だからこその監督の祈り。


うーん・・・。


決して後味の悪い映画ではないので、もしお時間があれば。