プログレ
お手伝いいただいているAさんが昔よく通っていたクラブでは、
“プログレ・テクノ”
というジャンルの曲がよく掛かっていた、という話を、
前の会社の先輩で、CDが多過ぎて部屋が地盤沈下を起こしつつあり、もし万が一自分が不慮の事故等でなくなった場合、それらが捨てられるのはあまりにもったないないので、記念館を作ってくれ、と後輩にあらかじめ遺言(?)を残しているほどの音楽マニアのHさんが聞いていて、
「そんなジャンルあるの!? 初めて聞いたよ!! だって、テクノ自体がプログレッシブなのに、それじゃあ、プログレ・プログレだよ!!(←?)」
と、いや、ある!ない!ある!ない!と隣で議論を戦わせていましたが、音楽に造詣が深くない私はそんなことより、その使い勝手のよさそうな響きが気に入り、
そのワード、勝手ながら、いただきました。
企画書上、あってもなくてもよかったんだけど、FRANZの、東洋と西洋が融合した斬新なデザインとか、食器を超えたオブジェ的な要素とか、とにかく従来の枠を超えた競合の存在しない新しいジャンルの食器、みたいなことを言い表すワードがあると流れ的に収まりがよいなぁ、と思っていたところだったので、そのままFRANZを
“プログレッシブ・テーブルウェア”
というジャンルのものとして定義づけ、勝手に企画書書いて社長に提出。
ま、直訳すると、そのまんまなんだけどね(笑)。
・・・で、そんなことをしていたら、宮沢章夫がちょうど同じように「プログレッシブ人生」というエッセイを最近始めて、そこにはこうありました。
―連載をはじめるにあたり、いったい「プログレッシブ人生」とはなんなのか、それはどんな人生か、と問われもした。まったく説明せずにはじめてしまったのは失敗だった。いきなりの「プログレッシブ人生」だ。どういう意味だと問われても致し方ない。字義通りに解釈すれば、「進歩的人生」ということになるが、では、「プログレッシブロック」を聞いていた者の誰もが、「進歩的だなあ」と、いったん日本語に訳して理解していただろうか。そう言葉にしていただろうか。もっと感覚的に「プログレッシブロック」は使われていたはずで、さらに短縮し、「プログレ」と口にしていたにちがいないのだ。
そう。直訳というより、このワード、まさに感覚的に使わせていただきたい。
お客様に「この食器、装飾的過ぎてほんとに使えるの?」と聞かれれば、
「ええ。まぁ。プログレなんで(そういうものです)。」
と答え、「すごいわねぇ。食器にウミガメねぇ・・・?」と聞かれれば、
「まぁ、プログレならではってかんじですよね。」
FRANZに投げかけられるあらゆる疑問・質問・オブジェクションを「そういう新たなジャンルです」と定義付けるだけで強引に乗り越えていけるのではないか、という一抹の希望を抱かせるワード、
プログレ。
奥深し。